
ドンペリは有名な高級シャンパン、「さぞ美味しいに違いない!」と思って飲んでみたら...「あれ?全然美味しくない。」実はこれ、珍しいことではありません。
「美味しくない」「まずい」という現象は、高級シャンパンに以外とよく起きるんですよね。理由が分からないと高価なだけにモヤモヤが残ります。
筆者もかつて、ワインに憧れ「好きになりたい!」と挑戦した一人でした。でも、最初は美味しいどころか「まずい。」と感じて挫折。それが今では、シャンパン・スパークリングワインにハマり、これまで100本以上を飲み、全日本ソムリエ連盟の認定ソムリエに。
そしてドンペリも、最初は飲み方を間違えて「こんなもの?」と過少評価していました。あまりに悔しく、その理由を探るべく何度もリピートした結果、ようやく本当の魅力が分かりました。
この記事では、そんな筆者の経験を交え、ドンペリが美味しくない」と感じる理由と、その印象を変えるヒント、さらに代わりにおすすめしたいシャンパンやスパークリングワインもご紹介します。
この記事を読めば、「ドンペリが美味しくない」と感じた理由が見えてくるはずです。
ドンペリが「まずい」「美味しくない」と感じる5つの理由

高級シャンパンとして名高いドンペリでも、「思っていた味と違う」と感じる人は少なくありません。実はその多くは、飲む環境やタイミング、味覚の好みなどによって起こるもの。
ここでは、ドンペリを「まずい」「美味しくない」と感じてしまう主な理由を解説します。「まずい」と感じ方は、下記理由のどれか1つもしくは複数に該当するはずです。
1. グビグビと一気に飲んでいない?

ドンペリは発泡性ワインのため、飲みやすく、特に暑い時期はビールのように喉の渇きを潤したくなるもの。しかし、ドンペリは喉の渇きを癒す用途には不向き。グビグビと早飲みしてしまうと、香りや味わいの変化を感じる前にグラスが空になり、高価なドンペリも「ただの炭酸アルコール」に感じてしまいます。
実は筆者も、これまで飲んだドンペリ2本は、この一気飲みで魅力を台無しにしてきました。「なんだ、ドンペリって大したことないじゃん」これが、最初の感想です。
ドンペリの魅力を味わうには、温度の変化や時間とともに広がる香りや変わりゆく味を楽しむ必要があります。
キンキンに冷えたまま一気に飲むと香りが閉じたままで、複雑な香味の変化を感じられません。冷えた状態から温度が上がる過程の変化こそが、高級シャンパンならではの醍醐味です。
2. 大人数で飲んでいない?

大人数の場だと、1人あたり1杯分(グラス1杯程度)で終わってしまうことがあります。それだと味の変化や香りの広がりを十分に感じられず、「なんだ、思ったより普通…」という印象で終わってしまいます。
ドンペリの魅力を味わうなら、2〜3人で1本をシェアするのがベスト。時間をかけて香りや味の変化を楽しめます。
3. そもそも炭酸(泡)が苦手

ドンペリは発泡性ワイン(シャンパン)です。細やかな泡立ちは魅力のひとつですが、そもそも炭酸飲料が苦手な人には刺激が強く感じられます。
「舌がピリピリする」「喉が痛い」と感じる場合、美味しさより刺激の方が印象に残ってしまいます。
4. そもそもワインが苦手

ドンペリはシャンパン、つまりワインの一種です。ワイン特有の酸味や苦味、アルコールの強さや香りが苦手な人は、どんな高級シャンパンでも美味しく感じにくいもの。
特に辛口タイプやアルコール感が強めのものは、甘口のアルコール飲料に慣れた人には飲みにくく感じられます。
ちなみに私はこの理由から一度ワインを「まずい」と感じて挫折しましたが、その後、甘口ワインと出会って一気に世界が広がりました。甘口派の方に向けたおすすめの甘口シャンパン&スパークリングワインは、記事後半で詳しくご紹介します。
5. 期待値が高すぎた

「高級(高価)=絶対美味しい」という先入観が強いほど、実際の味とのギャップを感じやすくなります。これまで数多くのシャンパンを飲んできた経験上、シャンパンの場合、価格と美味しさは必ずしも比例しません。
では、価格は何と比例するのかというと──私の実感では「価格=個性」です。高価なシャンパンほど、個性(こだわり)が強くなります。
そのため、「高級=万人が美味しい」という思い込みを持って飲むと、期待値の高さから逆にがっかりしやすいのです。ドンペリの美味しさや魅力を感じるには、その個性を理解し、引き出す飲み方をすることが大切です。
こうした理由から、初めてドンペリを飲んだときに「思ったより美味しくない」と感じる人は少なくありません。 しかし、それはドンペリの本当の魅力にまだ出会えていない可能性が高いです。
ここからは、多くの人を魅了し続けるドンペリの魅力についてご紹介します。
それでもドンペリは愛される|本当の魅力

ドンペリが「美味しくない」と感じてしまう理由を5つ紹介しましたが、それでも世界中で長く愛され続けているのには確かな理由があります。ここでは、その代表的な魅力を5つお伝えします。
1. 香りの複雑さと変化

ドンペリは香りの層が非常に複雑で、時間の経過とともに表情が変わります。冷えているうちは柑橘や白い花のような爽やかさ、温度が上がるとトーストやナッツ、熟した果実のような深みが現れます。
この香りの変化は、高級シャンパンならでは。特にドンペリの場合は冷えた状態から温度が上がる過程での変化が大きく、その幅の広さは一般的なシャンパンではなかなか体験できないレベルです。
2. 味わいの繊細さと、温度とともに変化する複雑さ

きめ細やかでクリーミーな泡立ちは、口の中を優しく包み込みます。炭酸の刺激が強すぎず、なめらかに広がるため、ゆっくり味わうと心地よい余韻が残ります。
また、高級シャンパンに共通する魅力として、温度の変化とともに味わいがシャープな印象からまろやかさへと移り変わり、より複雑な風味が広がります。一本のボトルで、時間とともに異なる表情を楽しめるのも魅力のひとつです。
3. 熟成による奥深さ

ドンペリは最低8年以上の熟成期間を経てリリースされます。長い熟成によって酸と旨味のバランスが整い、複雑な香味が生まれます。ヴィンテージによって個性が異なるのも、飲み手を惹きつけるポイントです。
4. 特別な場を彩る存在感

ボトルデザインやブランドストーリーが持つ高級感は、ギフトやお祝いの場にぴったり。飲む人だけでなく、その場の雰囲気まで華やかにしてくれます。
5. 静かに始まり、華やかに咲き、また静かに閉じる──そして記憶に跡を残す
私の経験上、ドンペリは目先のインパクトで勝負するシャンパンではありません。静かな佇まいから始まり、やがて開放感が広がり、お花畑のような華やかさを見せ、最後は静かに幕を下ろすように閉じていく──まさに「能ある鷹は爪を隠す」存在です。
これは、28年間ドンペリを導いてきた元最高醸造責任者(2019年に交代)、リシャール・ジェフロワ氏の言葉にも表れています。
『ドン ペリニヨンは、力強さからはほど遠い存在です。力は記憶に残らない。私は跡を残すのです』-リシャール・ジェフロワ氏
引用元:Winart (2012) No.67 美術出版社 pp.142
この「跡を残す」という感覚は、私自身がドンペリを飲むたびに感じていることでもあります。飲んでいる最中に美味しさを感じる瞬間が何度か訪れますが、結局はその全貌が掴めず、ミステリアスな印象だけが残るのです。
そしてその記憶が、また「次こそは正体を掴もう」とリピートさせる──これこそが、ドンペリ最大の魅力だと感じています。
振り返れば、ドンペリとの出会いが私の人生を変えました。最初は美味しさが分からず挫折した私が、今では100本以上のシャンパンやスパークリングワインを飲み、認定ソムリエとなり、この魅力を伝えるために記事を書いています。
ドンペリは、ただの高級シャンパンではなく、私にとって人生の指針であり、感謝してもしきれない存在です。
ドンペリをもっと美味しく感じるための工夫

ドンペリの魅力を最大限に味わうには、ちょっとした工夫が必要です。
ここではポイントを簡単にご紹介します。詳しい解説や手順は、別記事の「ドンペリの飲み方完全ガイド」でご覧いただけます。
- 開栓後は少し置いて香りを開かせる
- 少人数で、時間をかけて飲む
- 細長いフルートグラスではなく、丸みのあるグラスを使う
▶ 詳しくはこちら:初めてのドンペリ、飲み方完全ガイド|初心者が避けたいNGと後悔しない楽しみ方
ドンペリが合わないと感じた人におすすめのシャンパン&スパークリングワイン5選

ドンペリは美味しさを引き出すのに、飲み手側の経験や知識が少し必要なシャンパンです。だからこそ奥深く、魅力的なのですが、初めて高級シャンパンに触れる方にはハードルが高く感じられることもあります。
一方で、シャンパンやスパークリングワインの中には、飲んだ瞬間に「美味しい!」と分かりやすく感じられる、万人受けするタイプもあります。また、スパークリングワインはシャンパンに比べて価格が手頃なものが多く、気軽に試せるのも魅力。まずはスパークリングから始めて、自分の好みが分かってきたらシャンパンへステップアップするのもおすすめです。
ここでは、そんな“美味しさが分かりやすい”辛口派・甘口派に分けて、おすすめの5本をご紹介します。
おすすめシャンパン(辛口・甘口)
パイパー・エドシック ブリュット(辛口)
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柑橘や白い花、洋梨のフレッシュな香りに、トーストやナッツのニュアンス。きめ細かな泡とバランスのよい酸で「分かりやすい美味しさ」。初めての辛口シャンパンに最適。
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モエ・エ・シャンドン アイス・アンペリアル(甘口)
マンゴーやパイナップルのトロピカルな香り。氷を入れて楽しむ設計で、まろやかな甘みと爽快感が両立。甘口派やパーティーで「飲みやすい」と感じやすい一本。
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おすすめスパークリングワイン(辛口・甘口)
グラハム・ベック ブラン・ド・ブラン(辛口)
シャルドネ100%。レモンピールや青リンゴの香りに、きめ細かな泡。キレがありつつ果実味もしっかりで、辛口入門にちょうどいいバランス。
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フレシネ アイス・キュヴェ(甘口)
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白桃や洋梨のジューシーな香り。氷と一緒にカジュアルに楽しめる設計で、甘口でもべたつかずスッと飲みやすい。暑い季節や乾杯に◎。
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シュワルツカッツ ゼクト(甘口)
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やさしい甘みと軽やかな泡立ち。青リンゴや白い花の香りで、アルコール感が控えめに感じられ「甘口スパークリング入門」に最適。
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筆者のドンペリ失敗談|「大したことない」で終わった2本

最初に飲むドンペリは、きっと人生で一番贅沢な乾杯になる──そう思っていました。しかし、喉の渇きを癒すかのようにキンキンに冷えたドンペリをグビグビと飲み…、正直「大したことない」「こんなに高いのにこんなもんなの!?」と思ってしまいました。
2本目も大人数で飲んだため、1杯で終了。香りや味わいの変化を感じる前にフルボトル1本は空になりました。これら2本は、高価なシャンパンなのに、ただの炭酸アルコールのように扱っていたんですよね。
しかし「本当にこれがドンペリなの?」「悔しい」という思いから、飲み方や温度を変えて再度試したところ、まるで別物のような奥深さに出会えました。ドンペリは良くも悪くも、高級シャンパンらしく気難しさがあります。でも、繊細で奥深く、ゆっくりと時間をかけて向き合うことで、驚くほどの変化を感じることができます。
ちなみに、筆者にとってドンペリは、高級シャンパンで唯一「喜怒哀楽を味わうことができる高級シャンパン」。ミステリアスで始まり、正体を掴みかけた気がするのに最後はミステリアスで終わるのです。
感情を動かすシャンパンはほんの一握りです。そんなドンペリに、出会ってみませんか?
まとめ|「まずい」も魅力を知れば変わる

ドンペリは「美味しくない」「まずい」と感じてしまうことがありますが、その多くは飲み方やタイミング、好みの問題によるものです。正しい飲み方やシチュエーションを工夫すれば、筆者がそうであったように、その印象は大きく変わります。
そしてドンペリの魅力は、派手なインパクトではなく、静かに始まり華やかに咲き、また静かに閉じていく──そんな奥深い変化と記憶に残る余韻にあります。
もし今まで「合わない」と感じていたとしても、それはまだ本当の魅力に出会えていないだけかもしれません。まずは万人受けしやすいシャンパンやスパークリングワインから試すも良し。再度ドンペリを試すも良し。ドンペリの飲み方に注意しながら、改めてドンペリに向き合うことで、きっと、あなたの中でドンペリの印象が変わるはずです。








